2012年3月29日木曜日

まちづくり・都市計画・再開発

まちづくり・都市計画・再開発

(株)Arch5
小俣光一



 ドイツにおける再開発は、河川港などにおける物流拠点・工場などの跡地利用が多く見られる。多くは,交通ネットワークを生かし、業務(オフィス)・住宅・商業施設・文化施設などの複合施設として新たなる機能を生み出している。

ヴァッサーシュタット シュパンダウアー・ゼー:ベルリン西北部大規模再開発地域

                             ヴェストハーフェン再開発地区:フランクフルト

 再開発が行われる工場跡地は、元来交通の重要拠点にあった。ドイツでは、移動手段としては自動車や鉄道が発達していたが、物流において海外との交流や主要都市との大型搬送には川が重要な役割を果たし物流の拠点として整備されてきた。

 現在においては、その機能は大型トラックや航空機:エアーポートに役割を渡す事となった。しかしながら川沿いの港は景色がよい事や都心からのアクセスがよい事が別な意味で見直されてきている。




 歴史的背景においても、各再開発地域が培ってきた重みや厚みが次の建築計画にも大きな要素となる事が多い。デザイン的にも、港のガントリークレーンのイメージを建物に取り入れた物や奇抜なデザインが多い。更には、河岸線を越えて水辺に張り出した建物は、計画そのものが地区計画によって認められた物であるが、地域性や個性を生み出す事の大きな役割を果たしている。これも各地域を愛する人々の帰属感が可能にしたまちづくりであることを感じられる。

 まちづくりの観点から海外の再開発は、単独での住宅施設計画にはなっていない。大きなエリアでの位置づけをはっきりさせた上で、コンパクトシティーを適切位置している。開発に合わせた規模の商業施設・飲食店・業務施設・サービス機能などが適切に配置された計画となっている。

 ドイツ:ハンブルグ:ハーフェンシティー・ハンブルグは、現在においてヨーロッパで最大規模の再開発プロジェクトである。世界からの物資の流通拠点として巨大な港湾倉庫などそれらに伴う多くの施設が存在していた。しかしながら、流通その物のシステムが変わった事や施設自体が老朽化した事により、エリア全体での再開発が求められた。
 






このハーフェンシティは、ハンブルク市の南側を流れる。エルベ川の河川港を中心にして広がる再開発地区の総称で、総開発面積が100haに及ぶ欧州の中でも最大規模の再開発である。地理的にも、ハンブルク中央駅から約1㎞、旧市街に位置する市役所からも800mの距離にあり、都市隣接型の大型開発といえる。この開発によって、旧市街の面積が約40%増えることになる。






ドイツ:ハンブルグ:ハーフェンシティー・ハンブルグ


テキスト ボックス: ドイツ:ハンブルグ:ハーフェンシティー・ハンブルグ ハンザ同盟で有名なハンブルクの歴史は古く、現在はドイツ第二の都市にまで発展してきた。この都市は、オランダのロッテルダムと並ぶ欧州を代表する貨物港へと成長を遂げたが、それは再開発地区の入口に残された100年以上の歴史を持つ赤煉瓦倉庫群に表れている。その向こうに広がる再開発地区には、事務所や住居、商業のほか、娯楽や芸術・文化にかかわるすべての施設が整備されることになっており、将来的に予想される就業人口は約40,000人、また建設予定の住戸数は約5,500戸、新たな居住人口は最大で12,000人を想定している。

この再開発は、まだ序章に過ぎないが、ハンブルクの歴史の証としての倉庫群を大切に残しながら、その先に斬新な意匠を持つ建築群を配置することで、新しい港町ハンブルクと、その魅力的な将来像を深く印象づけることに成功している。

ここで日本の再開発と大きな違いが見られる。全てをスクラップ&ビルドするのではなく、エリアの持ったイメージや特性を生かしながら古い施設の一部を再利用している。また、エリアを一つの用途や一体の建物で計画するのではなくコンパクトシティーの機能を盛り込んだ複合型の施設計画に徹している。





ケルン:ライナウハーフェン河川港再開発


 もう一つの特徴ある再開発としてケルンのライナウハーフェン河川港再開発が上げられる。ケルンの中心部を南北に縦断するライン川左岸にある河川港を中心とした大規模な再開発地区で、南北の長さが約2㎞に対し、東西の幅が200mという細長い敷地が特徴である。ここでは古い建物の改修と新規物件の建設が同時に行われており、最終的な建築総床面積は約235,000㎡で、その内訳は事務所が約45%、文化施設が25%、住戸が30%(約700戸)である。この地区は、市内中心部や大聖堂のある旧市街からも比較的近く、徒歩圏内にあるため、ライン川を行き交う観光船や貨物船を見ながら散策できる絶好の場所となっている。
ケルン:ライナウハーフェン河川港再開発


 1898年に開港したこの地区には、長年にわたり穀物の貯蔵庫として利用されていた建物が建ち並んでいた。最も大きな倉庫は、保存建築の指定を受けたものの、しばらくの間、廃墟のような状態のまま放置されていたが、この建物の開発を担う会社と、ケルン市との間で協議が行われた結果、一階部分を店舗や事務所として利用し、上層部はすべて分譲住宅に改修することになった。また隣接する大型のサイロは構造的な問題から解体される予定であったが、設計事務所と構造事務所の提案によって、各階の床を新しく設けることにより、分譲住宅として蘇えった。

 この再開発地区内には、いくつもの倉庫が建てられたが、歴史的価値がないと判断された建物については解体さている。その跡地には、最上階部分がライン川に向かって片持ち状に張り出したクレーンハウスという事務所ビルや、マイクロソフト社が入居予定のM字型をした建物のほか、奇抜なファサードを持つ集合住宅が建てられており、土地利用の密度を上げた開発が行われている。また、この再開発に先立ち、その地下には細長い敷地に沿って南北1.5㎞の長さのある駐車場も併せて整備されている。




    
  
 ケルン:ライナウハーフェン河川港再開発
 ■ 観光都市開発

日本においても地域再開発に観光都市としての位置づ採用が開発の切り札にされる。しかし、その地域独自の生活がない観光地には面白みがない。歴史的町並みが面白いのではなく、その土地独特の食べ物やライフスタイルが、他の地域から来た人達にとって楽しい。歴史的町並みが評価されるのは副産物として考えるべきである。古い街並みや古い寺院は、古いことその物が価値ではない。その形や素材・質感に心和むものがあるのである。自分に無い物・体験した事がない物がそこに有るので、その地域に憧れる。決して古さや知名度だけで何度も同じ観光地を訪れるのではない。
賑わいのある観光地に楽しみがあるのは、その観光地や地域その物が生きているからある。海外の人たちが高い評価を与える日本の町並や工芸品の価値に、日本人には自覚できていないこれらの価値感を不思議であると思われる。日本の町並や工芸品の本質や本物の存在価値を見抜く力を日本人は身につける必要がある。


11月~12月にかけてヨーロッパ各地で行われるクリスマスマーッケット
夕方から毎日寒い外でイベントを楽しむ



ヨーロッパでは、歴史的評価の高い街に住むにあたって、その町に愛着心を持ち自分自身のライフスタイルとその地域に根ざした活動・仕事を行う。だから、歴史的町並みだけを保存するのではなく、歴史的町並みに住む自分を主張し自分の仕事に対してもプライドと結果を町に残す。

アムステルダムの町並みとジャワ-KNSM島建築群






アムステルダムの古くからの街並みとチューリップ祭り

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